【Kenshi 小説】太刀鋼―Tachigane―

――運命の日

 激しい回転音に目を覚ますと、俺の体は全身を包む咽(むせ)るような血の匂いが染みた機械に固定されていた。機械は俺を包むすき間を少しずつ狭めている。なんとか抜け出そうともがいてみるが、体は俺の意思に反してピクリとも動いてくれない。
 うなりを上げて回転する鉄のローラーが俺の体に触れた時、そのあとを想像してこの機械の目的に気づいた俺の口からは漏れ出るように声が、やがて悲鳴のように俺の心を蝕んだ。

「ぅぅぅううわああああああぁぁぁぁあああっ!!」

 チリチリと肌を焦がしていたローラーが、しびれる様な痛みとともに手の甲を削り出す。一切動かせない体が痛みだけを切実に訴えてくる。

「……落ち着け」

 回転するローラーの音に紛れて、爺さんの声が機械越しに背後から聞こえてきた。……ほどなくして、俺の体を削っていた機械がその動きを緩慢に止める。四方を取り囲んでいたローラーが開かれ、俺の体は自由を再び取り戻した。

「すまん、遅れた」

 治療キットで俺の手当てをし終えた爺さんは、半ば削り落とされた俺の手指が生えてくる様子を見ながらぼそりと言った。
 ……爺さんは悪くない。
 悪いのは、逃げに徹さなかった俺であり、弱いにすぎる俺であり、場を読み切ってとっとと逃げなかった俺にある。

 いつも俺が危ない目に合う度に、爺さんはこうして俺に小さく詫びた。

 そのたびに俺は強く思うのだ。

 ――もっと強くなりたい。

 ――爺さんと肩を並べられるほどに。

 そんな日が幾年と繰り返されたあの日。

 爺さんは姿を消した。

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GOSH

【五所川原銭夫(Gosh)】  【経 歴】暗号通貨ビットゼニーを愛するゲーマー。新しい物面白そうな物を体当たりで試そうとしては、恐妻にシバかれるまでが日常。  【Twitter】五所川原銭夫?ZNY+(@stak999)さん | Twitter  【欲しい】◇支援物資を送る◆

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