【Kenshi 小説】太刀鋼―Tachigane―
「がふっ」
最低限の警戒のまま飛び出した俺を待ち受けていたのは、圧倒的な膂力(りょりょく)から生まれる剣撃だった。振り回されるような視界の中、俺は背中に受けた痛撃で背負っていた鞘で幸運にも命が繋がれたことを知る。
「っぬあ!」
遺跡の壁へと叩きつけられ床に倒れこんだ俺は、魚人共を引き連れて遥か高みから俺を見下ろす存在へと目を向け、そして息をのんだ。いまだ痺れるように響いている痛みをこらえ、必死で体制を立て直した。
辛うじて手放すことのなかった刀が静かに鳴る。
「ガアアアアアアアアッッッ!!!」
耳をつんざくような衝撃を伴って放たれる王の咆哮は、まるで心を麻痺させられたようなおぼろげな意識へと強烈に揺さぶられ、あやうく己を見失いそうになる害意そのものと言えた。動きを半ば強制的に止められることになった俺の体を見越してか、すでに飛び掛かってきていたアルファたちの拳が容赦なく俺の体に突き刺さる。
そして、
意識は再び闇に消えた。
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