【Kenshi 小説】太刀鋼―Tachigane―
この世界には、何時の時代の物なのか人工物だったと思しき巨大な建物や、遺跡と呼ばれる建造物が無数に転がっている。それらはかつて栄光を誇った第二帝国のものであったり、それよりも遥か太古の、それこそ人類の起源に関わるような物もあるようだ。
そのあたりは爺さんからそれ以上のことを教えてはもらえなかったが、そういった事を研究している人間たちも居るそうだ。爺さんはそういう奴らに、修行の一環で手に入れた遺物を売って路銀の足しにしていた。
一般的にもそういった機械は高く買い取ってもらえる。俺はそんな目論見も手伝ってか、そびえたつ威容を晒した帝国時代の遺跡を眺めて少し息を吐く。
「よし、いくか。」
スロープ状の坂道を登りながら、遠目に駆け抜ける魚人どもの姿を確認する。やや急こう配になった坂道は意外なほど滑(なめ)らかで、それでいて足を滑らせてしまうような様子もない。岩とも土ともつかない未知の建造技術に興味を惹かれはするが、今気にすべきはその先にある遺物だ。
おそらくは太古、厳重に閉じられていたであろう門をくぐると、かすかな異臭を感じさせる遺跡の内部へと歩を進めた。
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